患者さまの気持ちを優先した診療を重視。
ご家族で一生涯にわたり通院できる「地域のかかりつけ医院」

とよた歯科クリニック 院長

豊田 眞仁 (とよた まさひと)

はじめに

宮島線・高須駅より徒歩4分の住宅地にある「とよた歯科クリニック」。院長の豊田眞仁(とよた・まさひと)先生は、丁寧な説明と患者さまの気持ちを汲んだ治療を大切にしています。広島市西区で開業した理由や歯科医師を志したきっかけや、診療に対するこだわりなどについて詳しく伺いました。

患者さまに寄り添う歯科医院を志し、地元広島で開業

広島市西区を開業場所に選ばれたのはなぜですか。

開業するなら地元広島でと決めていました。当院がある西区は、高校時代の級友や知人が多く住んでいる愛着のある街です。開業地探しのために20年ぶりに訪れた際も印象がよく、今後賑やかさが増していきそうに感じて、この地で開業したいと強く思いました。開業後は、地域のみなさまに温かく受け入れていただき、順調に地域になじむことができたと思います。

開業時の想いと、診療で大切にされていることを教えていただけますか。

私は、総合病院から街のクリニックまで、さまざまな臨床現場で幅広い診療に携わってきました。その経験を活かして、一人ひとりの患者さまに真摯に向き合い、患者さまの気持ちに寄り添う歯科医療を提供するために開業しました。
当院には口コミや紹介で来院される方が多く、ご家族全員で通われている患者さまも珍しくありません。「地域のかかりつけ医院」として安心の歯科医療を提供するために、全スタッフが力を尽くし信頼にお応えすることを大切にしています。

オールラウンダーをめざして研鑽を重ね、基本に忠実な治療を提供

そもそも、どのようなきっかけで歯科医師になろうと決めたのでしょうか。

はじめから歯科医師になりたかったわけではないんです。今では丸くなりましたが、歯科医師で厳格だった父への対抗心もあって、大学は医学部を志望していました。それがなぜ変心したのかというと、父と友人の言葉に心を動かされたからでした。
最初のきっかけは大学受験期。すべり止めに受験した歯学部の合格発表を見に行った帰りの新幹線の中で、父がふいに「歯医者になってくれたらうれしいんだけどな」とつぶやいたんです。父の気持ちを始めて知って、心が揺さぶられました。それでも医師になる夢を諦めきれず、医学部を目指して受験勉強を続けていました。
決定的なきっかけとなったのは同級生の言葉でした。歯学部2年のときにいつも温厚な友人から、「医師か歯科医師かハッキリ決めたらどうか」と叱咤されたんです。そこで我に返り、ようやく歯科医師になる決心がつきました。それからは一心不乱に勉強しました。
今ではこの仕事が天職だと感じています。

先生の専門は補綴(ほてつ)ですね。なぜ補綴の道に進もうと思われたのですか。

歯学部6年目に義歯を作る臨地実習があって、初めてなのに患者さまの口にピタッと合う義歯(入れ歯)を作れたんです。義歯は歯科技工士が作るのが一般的で、臨床では歯科医師が作ることはありません。そもそも最初から正確に噛み合う義歯を作るのは難しいんですよ。それなのに私が作った義歯は、のちに教授の技工士に任命されるほど精度が高かったようでした。
この経験をきっかけに、患者さまのお口の状態に合わせて補綴物を作り、口腔内でしっかり機能させる補綴治療に興味を持つようになりました。相談した教授に「補綴分野を修得するには最低でも4年は必要だよ」と助言をもらい、大学院の補綴科に進学することにしました。

オールラウンダーをめざされたのはなぜですか?

歯科界では有名な話なのですが、歯科技術についてこんな定説があります。桶を想像していただきたいのですが、桶の板が1枚でも欠けていれば水はすべてこぼれ、1枚でも短ければそれ以上水を入れることはできませんよね。歯科診療でも同じで、満足な治療を提供するには、知識・スキルが足りない分野や苦手な分野をつくらないことが大切です。要するに、特定の分野に秀でるよりも、総合的に研鑽を重ねたほうが、治療の質を向上させる近道になる。こんな話です。
この考えに基づき、歯科医師になってからも、治療のスキルを高めるために最新の治療法を学び続けました。他方で、勤務する病院を掛け持ちして口腔外科の経験を積むなど専門以外の技術も積極的に磨きました。オールラウンダーをめざし研鑽を積んだ経験は、今も患者さまの治療に大いに役立っています。

インフォームドチョイスを重視した診療で患者さまとの信頼を紡ぐ

診療でいちばん大切にしていることはどんなことでしょうか。

歯科治療では、患者さまとのコミュニケーションが大切です。正しい治療方法を提示したとしても、患者さまが納得されないまま治療を進めれば、信頼関係が損なわれてしまいます。たとえば、奥歯の抜歯が必要な患者さまから、「すぐには抜歯に踏み切れないので、先に前歯をキレイにしてほしい」というご要望をいただいたとします。そんなときは自分の診断を押しつけずに、咬合などから見極めたうえで、「では前歯から処置しましょう。あとで奥歯も治療させてくださいね」と提案します。すると患者さまは「希望を聞き入れてもらえた」と信頼してくださり、あとの治療がスムーズに進めやすくなります。
当然ながら、治療のたびに主訴や気になることをよくお聞きして柔軟に治療を進めています。

インフォームドチョイスを重視されていますが、それはなぜですか?

インフォームドチョイスはインフォームドコンセントとは異なり、歯科医師が治療方法の選択肢を提示・説明し、患者さまご自身が自分の意思で治療方法を選びます。医師が決めるのではなく自分で選択することで、治療に対する納得感が格段に違ってくるのではないかと思います。
私自身の経験ですが、気になる症状があって病院を受診した際、手術を強く勧められて不信感を覚えたことがあります。すぐに別の病院に行き再診すると診断は同じでしたが、2番目の担当医は手術への不安や費用、仕事への影響など細部まで気にかけてくださり、状況を汲んだ選択肢も提示してくださいました。このとき、患者さまに共感し、選択肢を提示することの大切さを身にしみて感じたんです。以来、伝え方やインフォームドチョイスを意識して、今まで以上にしっかり説明することに心を尽くしています。
また、最終的には数年後の定期検診で、特に問題がない正常像で誤診だったことがわかり、当時経過観察という選択肢を選んだのは今でもよかったと思っています。

丁寧な説明があると安心ですね。治療後の説明でもなにか工夫されていますか?

治療後には、画素数の多い口腔内カメラで治療箇所を撮影し、画像を大型モニターに映しながら処置について詳しく説明します。アニメーションも活用しながら画像を見てもらい、「この部分を神経に近いところまで削りました」「神経を保護するために薬を塗りましたよ」というように、治療過程をわかりやすく伝えています。
口腔内カメラでの撮影と説明は、義歯などの一部の治療を除くほとんどの治療で行なっているので、患者さまにとっても安心感が大きいと思います。

ストレスの少ない治療にも最大限に配慮

先生のお話を伺い、それぞれの患者さまに丁寧な診療を提供されていると感じました。

私は一人の患者さまを集中的に診察したいので、複数の患者さまを同時に診察することはないですね。1日に診察できる患者さまの数は限られますが、一人ひとりの患者さまに寄り添い良質な治療を行なうには今のスタイルが最適です。目の前の患者さまの治療を途中でやめて隣の診察室に移り、別の患者さまを並行して治療するようなやり方は、私には向いていないと感じます。しっかりお話を聞いたうえで、ゆとりをもって治療ができるように、患者さまにはできるだけ来院の予約時間を守っていただけると助かります。
また治療時には、患者さまに恐怖心を与えないことを心がけています。院内の絵画や観葉植物、BGMやアロマで穏やかな雰囲気づくりを行ない、歯科治療に強い抵抗感をもつ患者さまには、世間話を交えたおしゃべりで緊張をほぐすように努めています。患者さまのなかには、治療中に眠ってしまう方もいらっしゃいますよ。

よりよい歯科医療のために、スタッフのみなさんはどんなことに取り組まれていますか?

当院では、スタッフそれぞれが、その日にあったことや患者さま対応で気づいたことをメモに取り、夕方のミーティングで共有することを日課にしています。比較的余裕がある日には、スキル向上を図るためにスタッフ同士でクリーニングを行ない、感想を伝え合うという取り組みも実施しています。もちろん私が参加することもあり、歯科医師の目線で細かくアドバイスして、一人ひとりの技術向上をサポートしています。引き続きこうした努力を重ねて、患者さま満足の向上をめざしていきたいと考えています。
コロナ禍が明けて患者さまの数が増え、予約が取りにくいとの声を受けて、当院では歯科助手や歯科衛生士の数を増やし体制を整えました。基本的には現スタッフのスキルアップと若手育成に力を入れて、患者さまのお口の健康を守るお手伝いをしていく方針でおります。

お口の健康は全身の健康に直結。予防歯科で健やかに

お口の健康について、どのようにお考えですか?

8020運動が提唱されているように、自分の歯で噛んで食べ、全身的な健康を守ることには意義があります。歯の健康は全身の健康に直結するので、「たかが歯でしょ」と軽んじるのではなく、悪いところがあれば治療して、その後は予防のために定期的に通院することが大切です。痛みや不具合ができたときだけ来院するのでは、ほとんどのケースで歯を削ることになり、根管治療や抜歯の可能性も高まります。お口の健康のために3か月おき程度でクリーニングやメンテナンスを継続すれば、治療による心身への負担を減らすことができます。

最後に患者さまに向けてメッセージをお願いします。

私は、虫歯を削って詰めて終わりの「点の付き合い」ではなく、定期的に診て必要な場合だけ治療を行なう「面の付き合い」を理想としています。子どもはフッ素塗布で虫歯予防、成人は歯周病予防、高齢者は根の疾患予防と、重点的に予防すべきものはライフステージによって変わるため、患者さまの口腔内の変化を把握しながら年代に合わせた治療やケアを提供していきたいと考えています。
この先も一生涯にわたって通院してもらえる歯科医院をめざしてまいりますので、お口の中で気になることがあればいつでも相談してください。